1. はじまりは「好奇心」と「NFT」という熱狂
私が初めてデジタル資産という未知の世界に触れたのは、資産運用という堅苦しい動機からではありませんでした。数年前、世間を騒がせていた「NFT(非代替性トークン)」という言葉。デジタルアートが数億円で取引されるというニュースに、「一体何が起きているんだ?」と、ただ好奇心を抑えきれなかったのです。
コインチェックの口座を開設し、恐る恐る日本円を入金して手に入れたイーサリアム。当時の私にとって、それは投資というより「新しい時代のチケット」を買うような感覚でした。NFTを実際に購入し、その仕組みに触れて満足した後に残った、わずかなイーサリアム。それが、私の「迷走」の種になるとは、その時は知る由もありませんでした。
2. 「お金欲しさ」から始まった、13ヶ月のビットコイン積立
「残った端数をそのままにしておくのももったいないな」
そんな軽い気持ちで、アプリの隅に表示されていた「仮想通貨積立」のボタンを押しました。ビットコインに関する本を数冊読み、かつての爆上がりエピソードに触れるうちに、私の中に純粋な**「お金欲しさ」**が芽生えたのです。
「毎月3万円、これなら飲み会を数回我慢すれば捻出できる。数年後には何倍にもなっているかもしれない」
そんな皮算用をしながら、機械的な積立をスタートしました。
しかし、月日が経つにつれ、私の中に小さな違和感が積み重なっていきました。価格が上がれば喜び、下がればスマホを閉じる。そんな「画面上の数字に感情を支配される」日々に疲れてしまったのです。13ヶ月目。私は「私はビットコインの何を知っているんだろう? 何を応援しているんだろう?」という問いに答えられず、積立を停止。アプリ自体をホーム画面の奥深くに隠し、放置することを選びました。
3. 爆上がりと、個別株の「意味」との出会い
それからしばらくの時を経て、何気なくアプリを開いた瞬間の衝撃は忘れられません。放置していたビットコインが、私の予想を遥かに超えて、見たこともないような「利益」を叩き出していたのです。
「あのまま信じて積立を続けていれば……」
そんな後悔が頭をよぎりました。しかし、その頃の私は、すでに個別株の勉強を本格的に始めていました。株に関する本を10冊読み、Geminiと対話し、一社一社の業績や社長の想いを調べる日々。
そこで私は気づいてしまったのです。
仮想通貨の数字の上下には、私の感情を震わせる「意味」が欠けていることに。一方で、個別株には「意味」がある。会社が汗を流して働き、社会のインフラを支え、環境問題を解決する。その成長の結果として得られるリターンには、納得感という名の「手応え」がありました。
4. 投資の神様・バフェットが説く「生産的資産」の本質
ここで、私が学んだ「投資の神様」ウォーレン・バフェットの哲学を深く掘り下げてみます。彼は、投資を学ぶ者なら誰もが一度はぶつかる「何に投資すべきか」という問いに対して、あまりに鮮やかな答えを用意してくれていました。
バフェットは資産を、**「卵を産むニワトリ(生産的資産)」と、「自分より高く買ってくれる誰かを待つだけのもの(非生産的資産)」**に分けます。
• 株式は「ニワトリ」: 会社が働き、新技術を生み出し、配当という「卵」を産み続ける。
• 仮想通貨: それ自体が価値を生み出すわけではなく、ただ希少性があるから「明日、誰かがもっと高く買ってくれる」という期待だけで成り立っている。
バフェットはかつて、「世界中のビットコインを25ドルで提供されても買わない」とまで言いました。なぜなら、それは翌日もビットコインのままであり、何も生み出さないからです。
この言葉に触れたとき、私の「芯」は固まりました。私は、ただ価格が上がるのを祈る「投機家」ではなく、価値を生み出す「事業のオーナー(投資家)」になりたいのだと。
5. 現実の壁:税金の「雑所得」とNISAの「非課税」
理想だけでは資産は守れません。私が個別株へのシフトを急いだもう一つの大きな理由は、「税金」というあまりにシビアな現実でした。
勉強を進めるうちに、私は仮想通貨の税制の厳しさに愕然としました。仮想通貨で得た利益は「雑所得」として総合課税の対象となり、利益が大きくなれば最大55%もの税金が課せられる可能性があります。汗水垂らしてリスクを取って得た利益の半分を、国に納めることになるかもしれないのです。
一方で、個別株には国が用意した最強の防具**「NISA」**があります。限度額内であれば、利益も配当もまるごと自分のもの。
「いくら稼ぐか」以上に「いくら残せるか」が投資の要諦である。この学びは、仮想通貨を整理して個別株へ資金を移すという決断を、冷徹なまでに後押ししました。
6. 【現在の葛藤】決意を鈍らせる「急落」という罠
しかし、ドラマのような展開が待っていました。「すべてを売却して個別株に移そう」と決意し、注文ボタンに指をかけた瞬間、仮想通貨市場が急落したのです。
一時は輝いていた大きな含み益が、見る間に削られ、今や元本を割り込むかどうかの瀬戸際にいます。
「今売れば、これまでの我慢がマイナスで確定してしまう」
「今年中にもっと上がるというニュースもある。あと数ヶ月待てば、もっと良い状態で株に乗り換えられるのではないか?」
バフェットは「規律を守れ」と言うでしょう。サンクコスト(埋没費用)に囚われるな、と言うでしょう。でも、自分のスマホに映る「マイナスの数字」を認めることは、自分のこれまでの判断を否定することにも似た、身を切るような痛みがあります。
今、私は自分の「欲」と「規律」の狭間で、激しく揺れ動いています。
7. おわりに:後悔を糧に「四季報」という海へ
仮想通貨を「夢(欲)」で買った過去の自分。個別株を「意味(納得)」で買いたい今の自分。
この葛藤こそが、私が投資家として一段階成長するために必要な「痛み」なのだと感じています。
今後、私は仮想通貨の売却タイミングを冷静に見極め、その資金をNISA枠での個別株投資へと着実に移していきます。税制も、経済指標も、企業の理念も、学び続けることはやめません。
そして次回の記事では、いよいよ重厚な「四季報」を開封します。数字とチャートの山から、バフェットが愛するような、世界を良くする「黄金のニワトリ」をどう見つけ出すのか。その冒険の記録を、またここで共有させてください。
📝 30代からの株日記 #4(決断編)
• 今のポートフォリオ: NTT(50株)、王子HD(10株)、オリエンタルランド(5株)
• 格闘中のテーマ: 損失回避性(マイナスを認めたくない心)との決別。
• マイルール: 「なぜその資産を持つのか」を毎晩自分に問い直す。納得できないものは、たとえ損をしても手放す勇気を持つ。
