プロローグ:午前8時55分の静寂
3連休をすべて捧げ、指先を四季報のインクで黒くしながら作り上げた「129社のお気に入りリスト」。楽天証券のアプリ「iSPEED」の中に整然と並ぶその星たちは、私にとって、この社会を生き抜くための精鋭部隊のように見えました。
月曜日の朝。いつもなら憂鬱な仕事の始まりも、今日だけは違います。スマホの画面に表示された時計が、刻一刻と午前9時へと近づいていく。 「本当に、この中のどれかを買うのか?」 「もし、買った瞬間に暴落したら?」 「129社もあるのに、チャンスを見逃してしまったら?」 心臓の鼓動が耳元まで響くような、静かな、けれど激しい緊張感が部屋を支配していました。
1. 9時ジャスト:129社が「生命」を持った瞬間
午前9時。それまで静止していた数字たちが、一斉に点滅を始めました。 赤と緑の光が激しく入れ替わり、気配値(板)が上下に踊る。四季報の紙の上で「静止画」だった企業たちが、市場という大海原で一斉に「呼吸」を始めたかのような、圧倒的な光景でした。
「うわっ、動いてる……!」
129社ものリストを入れていると、画面はまるでお祭りのようです。急騰して「特買」がつく会社、予想外に静かな滑り出しを見せる会社。3連休の間に自分が抱いていた「勝手なイメージ」が、市場の現実によって次々と塗り替えられていきました。四季報で「右肩上がり」だと確信したチャートも、リアルの波の中では、一瞬の迷いも許さない鋭い動きを見せていました。
2. 私の「精鋭部隊」を紹介します。現在所有している銘柄たち
ここで、私が現在、どのような思いで「ニワトリ(資産)」を育てているのか、私のポートフォリオを彩る大切な8つの銘柄をご紹介します。
■ 暮らしを支える「食」と「インフラ」
- アサヒグループ(2502)10株 ビールだけでなく、飲料や食品でも圧倒的なブランド力。四季報で海外展開の強さを再確認し、安定感を期待しています。
- 味の素(2802)3株 「アミノサイエンス」という独自の強み。少量ですが、世界中で愛されるその技術力を応援したくて仲間に加えました。
- NTT(9432)50株 私のポートフォリオの屋台骨。日本の通信インフラという「最強の堀(モート)」を持つ、私にとって最も安心感のある一羽です。
■ 社会の土台を造る「素材」と「化学」
- 王子ホールディングス(3861)10株 広大な森林資産。環境問題が叫ばれる中、脱プラの未来を担うこの会社には、単なる「紙の会社」以上の期待を寄せています。
- 信越化学(4063)2株 世界シェアトップの製品をいくつも持つ、日本が世界に誇る最強の化学メーカー。四季報の利益率の高さには、ただ溜息が出るばかりでした。
- 大日本塗料(4611)20株 暮らしのあらゆる場所に使われる塗料。地味かもしれませんが、こうした縁の下の力持ちが社会を支えていることを四季報で学びました。
■ 未来への「夢」と「技術」
- オリエンタルランド(4661)5株 圧倒的なファンの支持。四季報の【独自予想】からも、そのブランドの盤石さが伝わってきます。私自身の「好き」も込めた一社です。
- ルネサスエレクトロニクス(6723)5株 自動車向け半導体で世界をリード。これからのEV化・自動運転化に欠かせない、私のポートフォリオの「攻め」の要です。
3. 「選び抜いたはず」の自信が、一瞬で溶けていく恐怖
四季報を読んでいた時は、「この業績なら間違いない」と確信していました。しかし、いざリアルタイムで動く株価を前にすると、その自信はもろくも崩れ去ります。
「今の価格は、高いのか? 安いのか?」 「四季報に書いてあった『絶好調』は、もう株価に織り込まれているんじゃないか?」
129社という数は、初心者の私にとって、あまりに多すぎたのかもしれません。あっちが気になればこっちが下がる。こっちを見ればあっちが上がる。 仕事中、トイレに駆け込んでスマホを覗き、一喜一憂する自分。仮想通貨の時と同じ「価格に支配される」過ちを犯していないか、画面の前で激しい自問自答が続きました。
4. 四季報は「答え合わせ」のための地図だった
迷路に迷い込んだ私を救い出したのは、やはり、あのボロボロになった四季報とバフェットの言葉でした。
「リスクとは、自分が何をやっているか分からないことから来る」
私は一度、激しく動く全体画面から目を逸らし、自分が最も「納得感」を持った数社にフォーカスを絞りました。それは、四季報で「販売先」まで調べ上げ、自分の地元・愛知との繋がりを感じた企業です。 「この会社が作っているものは、社会に不可欠だ。それは、今日明日の株価がどうなろうと変わらない事実だ」
数字の上下(価格)を見るのではなく、その裏側にある「ビジネス(価値)」を見る。 そう自分に言い聞かせ、四季報のページと楽天証券の画面を照らし合わせる「答え合わせ」を終えたとき、ようやく指の震えが止まりました。
5. 初陣の「注文ボタン」:0.1秒の決断
ついに、注文画面を開きます。 楽天証券の「買い」ボタン。仮想通貨を買った時のような、どこかギャンブルに近い感覚とは全く違います。 「私は、この会社の未来を応援する。この会社が産む『卵』を、長く見守るんだ」
129社の中から、迷いに迷って選び抜いた一社。 暗証番号を打ち込み、注文確定のボタンを押したその0.1秒。画面に「受付済」の文字が出た瞬間、私は本当の意味で「市場の参加者」になったのだと実感しました。
結び:129社の星は、私の「地図」になる
結局、初日に買えたのはわずかな株数でした。129社すべてを把握することなんて、到底できません。でも、それでいいのだと思います。 あの厚い四季報をめくり、129社に付箋を貼り、楽天証券に星をつけた。そのプロセスがあったからこそ、私は今日、迷いながらも一歩を踏み出すことができました。
129社のリストは、ゴールではありません。これから毎日、この星たちがどう輝き、どう陰っていくのかを見守りながら、私は自分だけの「宝の地図」を更新し続けていきます。 四季報をめくる指がインクで汚れるたび、私は少しずつ、本物の投資家に近づいている気がするのです。
最後に。 こうして色々と考えを巡らせてきましたが、株の世界に「絶対」はありません。どれだけ四季報を読み込んでも、どれだけ愛着があっても、最後は自分の資産を守るのも増やすのも自分自身。**「株は個人の責任」**だからこそ、私は明日もまた、自分の目で、自分の納得を探しにいきます。
📝 30代からの株日記 #5
- 今の保有銘柄: アサヒ、味の素、王子HD、信越化学、大日本塗料、オリエンタルランド、ルネサス、NTT。
- 今日のひとこと: 買う理由が「チャート」から「ビジネス」に変わった日。
- 次回の予告: 買った直後の「洗礼」。上がっても下がっても、バフェットならどう笑う?
