画面の向こうの「きらきら」に焦がれて
休日の昼下がり、お気に入りの温かい飲み物を片手に、旅番組やYouTubeの旅系チャンネルをぼーっと眺めている時間が、私にとって何よりの癒やしです。
美しい海、歴史を感じる路地裏、湯気があがる温泉、そして現地で出会う美味しそうな料理の数々。画面の向こうで、カメラに向かってその土地の魅力を生き生きと伝えているクリエイターたちを見ていると、胸の奥がキュンと切なくなるような、憧れに似た感情が湧き上がってきます。
「旅をして、その土地の素晴らしさを伝えることを仕事にできるなんて、本当に素敵だな」
そんな風に、旅ブロガーやトラベルライターという存在に、昔も今もずっと強い憧れを抱いています。
「旅行が好き」というシンプルな情熱。それさえあれば、私もいつかそんな風に輝けるのではないか。そう信じて、私は数年前、旅行業界の門を叩きました。しかし、いざその世界に飛び込んでみると、そこには理想と現実の、ちょっぴりほろ苦いギャップが待っていたのです。
今回は、私が仕事を通じて身をもって知った「好き」の本質と、今週末に控えた少し変則的な旅、そして旅先で挑戦してみたい「小さな企み」について、等身大の気持ちを綴ってみたいと思います。
「旅行が好き」と「旅行の手配」は、交わらない平行線だった
私は現在、旅行会社で働いています。 周囲の友人や知人に仕事の話をすると、よく「旅行が趣味なんだから、好きなことを仕事にできていて羨ましいな」「毎日楽しそうだね」と言われます。入社する前の私自身も、まさにそんなきらきらした未来を思い描いていました。毎日、旅行のパンフレットに囲まれて、ワクワクしながら働く自分を。
しかし、実際の業務は、私が想像していた「旅の楽しさ」とは180度異なるものでした。
日々、受話器から聞こえてくるお客様の要望に耳を傾け、1文字のミスも許されないシステムへの予約入力、目まぐるしく変わる現地からの最新情報のチェック、そして何かトラブルが起きればその対応に追われる毎日。
確かに、誰かの大切な旅を裏方として支える仕事は、とても社会的な意義があり、立派な役割です。ですが、その慌ただしい業務の渦中にいるとき、私の心の中に「旅をして感動する瞬間」はありません。目の前にあるのは、ただ整然と処理されるべき「データ」と「手続き」です。
「入社前にもっと、この仕事の具体的な中身やリアルな裏側を調べておくべきだったな」
今でもふと、自分のリサーチ不足に苦笑いし、ちょっぴりほろ苦い後悔を覚えることがあります。
けれど、この「思っていたのと違った」という経験は、私の人生において決して無駄ではなかったとも感じています。なぜなら、この強烈なギャップを経験したからこそ、私は自分自身の本当の望みに、これ以上ないほどクリアに気づくことができたからです。
「私は旅行の手配がしたいわけじゃない。私自身が旅に出て、現地の風を感じ、そこで得た感動を自分の言葉で誰かに伝えることが大好きなんだ」
仕事を通じて「やりたいことの輪郭」がはっきりしたこと。それこそが、私がこのキャリアから得た、一番の収穫なのかもしれません。
誰も教えてくれない、旅ブロガーたちの「生みの苦しみ」
仕事の現実に直面してから、私は旅系YouTuberや旅ブロガーたちの発信を、以前とは少し違う視点で見つめるようになりました。
以前はただ「いいなぁ、楽しそうだな」と羨むだけでした。しかし、発信の難しさを少しずつ知り始めた今の私には、彼らの「きらきらした日常」の背景にある、圧倒的なプロ意識と血の滲むような努力が透けて見えるのです。
彼らは、ただ旅行を楽しんでいるわけではありません。
- 重いカメラや撮影機材を常に持ち歩き、観光地でも「どう切り取れば魅力が伝わるか」と頭をフル回転させている。
- 美味しいご飯を目の前にしても、冷める前にベストなアングルで写真を撮り、メモを取る。
- ホテルのふかふかなベッドにダイブしたい気持ちを抑え、深夜までパソコンのブルーライトに照らされながら、動画の編集や執筆作業に追われている。
楽しい瞬間だけが綺麗にトリミングされた画面の裏側には、私たちが想像する以上のエネルギーと、「表現することへの執念」が隠されているはずです。
「好きなことを仕事にする」というのは、単に楽しむことの延長線上にあるのではなく、楽しむことと同時に、その裏にある『生みの苦しみ』をも引き受ける覚悟を持つことなのだと、今の私なら少しだけ理解できます。それは決して生半可な気持ちで真似できるものではありません。
今週末、私を待つ「変則的な旅」のスケジュール
そんな旅への憧れと現実の狭間で揺れ動きながらも、私の旅への熱量が冷めることはありません。 実は、今週末から私にとって非常に楽しみな、そして少し変則的な旅が始まります。
今回の旅のきっかけは、夫の仕事。 夫が出張のため、金曜日から現地に前泊する必要が出てきたのです。「それなら私もついていっちゃおう!」ということで、夫の出張に便乗する形で私の旅がスタートします。
スケジュールを整理してみると、なかなか面白いことになっています。
- 1日目(週末): 夫の前泊に合流。久しぶりに夫婦2人で、現地でのんびり観光やグルメを楽しむ。
- 2日目(日曜日): 夫はそのまま現地の仕事へ。私は「じゃあ、頑張ってね!」と夫を見送り、ひとりで新幹線に乗って帰路につく。
- 平日の日常: 私は普段通りに起きて、旅行会社での仕事に励む。夫は出張先で仕事をこなす。
- 翌週末: 出張から無事に帰ってきた夫と合流し、今度はまた別の場所へ夫婦で旅行へ!
まるで旅の2本立てのような、バタバタしつつも贅沢なスケジュール。 この予定をカレンダーに書き込んでいるときから、私の心はすでに仕事の手配業務を飛び越えて、まだ見ぬ旅先へと飛んでいました。やっぱり、旅の計画を立てている瞬間が、人生で一番アドレナリンが出ている気がします。
旅先に連れていく相棒を、ノートPCから「iPad」に変えてみる
そして、今回の変則的な旅において、私はずっとやってみたかった「小さな挑戦」を企てています。 それは、「旅先の時間の中で、ブログを執筆してみる」ということです。
普段、私は仕事がお休みの日に、自宅のデスクで一息つきながらブログを書いています。それはそれで落ち着く時間なのですが、今回は旅行に行くため、当然その時間が確保できません。 「じゃあ、今回は書くのをお休みにしようかな」とも思いました。けれど、ふと思いついたのです。
旅先でお気に入りのカフェや、ホテルの静かなラウンジを見つけて、そこでブログを書いてみたらどうだろう?
想像するだけで、ちょっと憧れの旅ブロガーに近づけたような、かっこいい気分になります。 ただ、そこで持ち物検査をしてみました。私の相棒であるノートパソコン。……うーん、旅の荷物に入れるには、ちょっと重いし、かさばるな。
「ブログを書くぞ!」と気合を入れて重いPCを持って行っても、結局使わずにただの『重り』になって帰ってくる未来が目に見えます。それに、いかにも「仕事モード」なPCを旅先で開くと、なんだか義務感に追われているような気持ちになってしまう。
そこで今回は、相棒をノートPCではなく「iPad」にすることにしました。
これが、我ながら大正解な予感がしています。 iPadならカバンの隙間にするりと収まるし、何より軽い。キーボードをパチっと繋げば、旅先のカフェが瞬時に小さな書斎に早変わりします。
なにより、PCのように「さあ、仕事するぞ」と身構える必要がありません。 移動中の新幹線でサッと取り出して写真を整理したり、ホテルのベッドの上でゴロゴロしながら、手書きのイラストやメモ感覚で、その時感じた温度をそのまま文字に紡いでいく。 この「デジタルでありながら、どこか文房具に近いラフさ」が、今回の旅の空気感にぴったり寄り添ってくれそうな気がするのです。
「発信」と「体験」の心地よいバランスを探して
ただ、道具を軽やかにしたとはいえ、自分の中に小さなしがらみもあります。
「ブログを書くことに気を取られて、目の前にある旅行を楽しむ時間が減ってしまったら、本末転倒じゃない?」
「このお店、ブログのネタになりそう!」「この景色、写真に撮ってアイキャッチ画像にしよう」 そんな風に、すべての体験を『発信のためのネタ』というフィルターを通して見てしまったら、目の前にある旅の純粋な美しさや、夫と交わす何気ない会話の楽しさが、色褪せてしまうのではないか。
せっかく日常から離れてリフレッシュしに来ているのに、自らタスクを旅先に持ち込んで、自分で自分を忙しくしてしまうのは、それこそ本末転倒な気がするのです。そんな、旅を楽しみたい自分と、憧れの旅ブロガーの真似事をしてみたい自分の間で、心は小さなシーソーゲームを繰り返しています。
だからこそ、今回はあえて「PC」ではなく「iPad」という、少しハードルを下げた選択をしたのかもしれません。
今回の私のマイルールは、「義務にしないこと、格好をつけすぎないこと」。
「絶対に1記事書かなきゃ」と自分を追い詰めるのではなく、まずは目の前の旅を全力で楽しむ。 美味しいものを食べて「あぁ、幸せだな」と噛み締め、夫と「楽しいね」と笑い合う。 そうして五感をいっぱいに使って旅を味わい尽くす中で、コップから水が溢れるように、「あ、この気持ちを今すぐ言葉にして残しておきたいな」という熱い衝動が湧き上がってきたときだけ、そっとiPadを広げればいい。
それこそが、プロではない、一人のアマチュア旅ブロガーとしての「等身大で一番贅沢な、旅と発信の付き合い方」なのだと思います。
カバンに忍ばせた、小さな相棒とともに
旅を仕事にしているプロのように、24時間すべてをコンテンツ化するようなストイックさは、今の私にはまだありません。 でも、だからといって、発信することを諦める必要もないはずです。
まずは今週末、夫との貴重な時間と、一人で過ごす静かな移動の時間。それぞれの良さをしっかりと肌で感じてきたいと思います。
カバンの中に、すっきりと収まったiPadを忍ばせて。
それでは、行ってきます!みなさんも、温かい素敵な週末をお過ごしください。旅の答え合わせは、また次回の記事で。
